科目を問わず、「どうしても苦手な分野」ってありますよね?
私の受験生時代は英語のIdiom、世界史の現代史、数Aの幾何などがそうでした。
苦手の原因はさまざまで、人の数だけ処方箋があり得ます。例えば、単純な反復練習不足。これは克服が簡単です。ただやりさえすればよいだけなのですから。他には、何か根っこの部分で考え違いを起こしており、一定以上のレベルになるとそれが表面化する…などといった場合も考えられます。その分野をしっかり知っている先生に原因分析をしてもらうか、あるいは思い切って範囲をさかのぼっての復習が有効ですね。
ですが、これらの取り組みにもかかわらず、苦手が残り続けてしまうことが時にあります。こうなった場合、「自分の脳味噌とその知識が相性が悪い」、とも言えますね。
こんなとき、取れる手段は何でしょうか。直前期の場合、その分野は捨てて別の分野にヤマを張ったりなど、点数戦略でごまかすこともなくはありません。
とはいえ、まだまだ本番まで時間があるならば、逃げの手段を早々に講じてしまってはもったいないですよね。そんな時は「一度できるだけ詳しく知ってしまう」という手があります。
英語monogrammarシリーズ
おススメ度:★★★☆☆
問題数 :★★★☆☆
問題文 :★★★☆☆
解説量 :★★★★★★
開拓社、お茶の水ゼミナールからのシリーズ。非常にシンプルな表紙が一種のオーラを発散しているような気がしますね。開拓社は辞書や英語学の専門書も出している会社です。同社の「英文法大辞典」シリーズはそこらの英文法概説書を一蹴するレベルの詳細さ。お茶の水ゼミナールは首都圏中心に展開する講師も生徒も少数精鋭の塾。早慶上理以上を志望していない生徒を探す方が難しいです。
さて、そんな中から出たこのシリーズ。普通の英文法問題集にしか触れてこなかった生徒は手に取って中を覗いてみて驚愕するはずです。
シリーズは全5冊からなります。(そのうち増えるかも)
①関係詞
②比較
③準動詞
④助動詞・仮定法
⑤時制・相
タイトルを見ただけでワクワクしますね!高校生向けの英語参考書のタイトルに「相」だなんて冠したテキスト、他にあるのでしょうか?
早速、気になる中身を覗いていきましょう。
◇教材の特徴
・曖昧な理解を完全排除
・英作文トレーニングにも
各巻はstage1:英文法の理解とライティング、stage2:大学入試文法問題に挑戦、stage3:より深い英文法へ、の3部構成になっています。各stageが文法事項別に細かいセクションに分かれていますね。巻にもよりますが合計で30~50セクションほど。stage1には各セクションごとに短い英作文問題が含まれていますし、stage2は300問ほどの文法4択問題が所収。問題量的にも十分です。
特筆すべきは各セクションの解説の詳しさ!「『~したものだ』を表すused toとwouldの違い」、「相対時制」「自由間接話法」「根源的用法・推定用法・仮定用法」「I'm lovin' itの意味」など、まず他の受験参考書ではお目にかかれない内容がズラリ。
解説は高校英文法で語られる用語や枠組みとは必ずしもリンクしていない部分があり、とっつきにくくはありますが、深い納得に導いてくれるのが素晴らしいです。問題のレベルは意外と低く、英文法ファイナルの緑よりずっと簡単。まあ、相応の問題を大学受験過去問のレベルからは引っ張ってこれなかったという見方もあるのでしょうが…。
stage1のセクションにはライティングのトレーニングとして英作文の問題が10問ずつ付属しています。表現力を意識した構成ということもあるでしょうし、「鉄は熱いうちに打て」精神の現れともいえるでしょう。ただ、問題に対しての解答解説はさすがに不十分です。英作文力を高めるための例文帳として使うこともできるので、国公立が第一志望とかでガッツリとした英作文が出るならば演習する価値があるといった感じですかね。
◇おススメ使用法
辞書的に使うことをお勧めします。
問題を解いて、苦手を発見して、手持ちの参考書で苦手範囲を繰り替えし演習しても、テキストを変えれば途端にボロボロになってしまう、そんな状態の場合はこれの街頭単元を紐解いてひたすら熟読。情報を取捨しつつ自分でノートにまとめるなどのことをしてもよいでしょう。
後は勉強していて生まれた疑問点を自己解決したいとき。英文法の問題や、英作文をしていて疑問に思ったところって、ある程度分厚い参考書でも案外書いてなかったりするんですよね。それは合格には関係ない些末なことなのかもしれませんが、その疑問を解消するのも、英文法の勉強のモチベーションの維持のためにも時には必要です。
◇使用時期
直前に解くのはさすがに効率が悪すぎます。受験学年の春などに買って、チビリチビリと大切にとっておいたジャムを舐めるように、時と場合を見計らって少しずつ演習していくとよいです。全部終わらせることができなくても構いません。サブ的な運用を常にしておきましょう。
◇最後に
ここまで見てきた通り、この教材は決して英語学習のメインを張る教材ではありません(少なくともGMARCHレベルにおいては)。しかしながら、手に取りたいときに取れるところに置いておけば、モヤモヤ続きの英語学習が少し明るくなるかも。白川静の「常用字解」的な本です。我こそはという猛者は挑戦してみては。